島飯『 縁 ~えにし~』

島飯『 縁 ~えにし~』

2011年3月6日日曜日

『SENSE hair』



店舗移転に際し、リニューアルの依頼である。

地域に根ざした実績のある美容院の『移転』。
今回のプログラムは、今後の『店舗』という在り方を考えた時、全く新しい、一つの進化の指針になるのではないかと感じている。

簡単に言うと、店舗の「引越し」に近い感覚である。オーナーが変更になる訳でもなく、地域を変える訳でもなく、ただテナント物件を変更する、というプログラムである。
今までは、新規事業の立ち上げや、今あるテナント内でのリニューアル、という案件は多かったが、店舗でこのようなケースは例が少ない。

最初は戸惑いもあったが、考えれば、考えるほど利点が多い。

業種によっては、流行やニーズの変化により、数年前は良しとされた事象も、現代の異常な速さでの時代(情報)の変化でどうしても対応が遅れてしまう。そして、テナント賃料の問題、不備を解決する際の中途半端に掛かる資金的な問題、変化の速度に対応しきれない変更不可能な導線やシステムの問題、等々、なかなか現状を解決できず、妥協や苦悩をしながら進んでいる経営者は多い様に思う。

2度目の店造りなら、ツボを押えながら10年先を見据え、良いとこ取りの店舗が出来るのではないか?
今ある設備器機や、スタイル、そして有能なスタッフを更に活かす為に、現店舗の問題点を解決しながら新しく再生していく。

そんな発想から『移転』という選択がされている。

確かに、設計という立場からプログラム全体を眺めても、根っこからの問題解決にならない改装に大きな資金を掛けるぐらいなら、戦略をしっかり練り直し、執着を捨て、思い切って別のテナントでリスタートを切った方が良いと思われるケースは多い。

今回も、移転先テナントを十分に吟味し、条件の絞込みや見直し、そして様々な交渉を重ね、事前準備に相当な時間を費やした。ただ、ここまで準備を重ねても、事業資金の問題や顧客管理の問題など、よほどの自信と確信、何より大きな勇気が無いと踏み切る事は難しいであろう。

しかし、これだけの速度で時代(情報)が進む世の中では、この『勇気』という部分が必要不可欠になってくると感じる。そして、業種によっては、逆に最初からこういった発想を想定し、人だけではなく、店舗すらも移動しながら進化する必要がある時代なのではないだろうか。
そして、表面上の見え方だけではなく、個々のプログラムに応じて全体を見渡し、整理や調整を施し、選択及び決定していく事こそがこれからの設計・デザインに不可欠なのではないだろうか。

新しいプログラムの形ではあったが、今回の経験は今後の大きな糧となるだろう。

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