島飯『 縁 ~えにし~』

島飯『 縁 ~えにし~』

2011年5月31日火曜日

『青処 八百心』


店舗デザインの依頼、その用途は「八百屋」であった。


昨今、ほとんどの人はスーパーマーケット等の総合店舗で買い物をする機会が多いと思う。

様々な分野が合理化、効率化、大型化し、1箇所のスーパーマーケット、もしくはコンビニに行けば殆どの物がいつでも(24時間営業)揃う時代であり、確かに大変便利な世の中である。

しかし、一方で、その便利さ追求故に、多くの場所で、過去の大切な町の風景(商店街等)が消えかかっているのも現実である。

思い返せば、幼少の頃、親に使いを頼まれ、八百屋を筆頭に、魚屋、肉屋、酒屋などなど、地元に根付いた商店街の馴染みの商店に出向き、おじちゃんおばちゃん相手に買い物してたなぁと思い出す。

その頃に感じた、それぞれの商店の独特な雰囲気や活気、目と目を見て会話や対話をしながらの買い物が懐かしい。

スーパーマーケット等のセルフサービス形態の店舗では味わえない、人と人との直接的なコミュニケーションを感じ、尚且つ、鮮度や商品構成、そして武器となる拘りの分野を特化出来れば、市街地であろうが地方であろうが、大いに可能性を見出せる。そういった新しい商店の在り方をクライアントと共に模索して行った。

活気と言えば、真っ先に市場(いちば)などの場所が思い付く。人の多い土地に、楽市・楽座・売り場のような一つの点が出来、その点が発端となり、また新たな点を呼び、一つ一つ増殖しながら一人一人が繋がり、市場(いちば)のような点の集合体である場所や地域が生まれる。その集合体こそが町の商店街の成り立ちのはずである。

本来、スーパーマーケットとは、市場(マーケット)を上回る(スーパー)場を目指して発達して来たはずの形態であるが、セルフサービスという形態である限り、人と人とのコミュニケーションの場としては、市場(いちば)やデリの様な場には敵わないだろう。

更に、全国的に食の不安が目立つ昨今である。売り手自身が、直接農家と対話し、直接手に触れ、直接売る事で、季節の旬の物、商品の鮮度や出来栄えも、リアルに直接ユーザーに訴える事が来る。そうする事で商品と一緒に『安心』も買える様な店舗になる。個人個人への量り売りにも対応するキメ細やかさや、配達サービス、そんな気の利いた地域に密着した動きが『商店』でなら可能なのではないか。

大型スーパーとは違うポジションが確実に存在し、一つの物に特化出来る、と言う武器を持った『商店』の新しい在り方が、必ずあるはずである。


新鮮な青果の鮮やかさと無垢の力強い木質をあえて対峙させる。青空市場のテントの様な軽やかさを備える。視角的にも空気的にも、外部と内部の境目を極力排除し、内外のエネルギーを調和させる。

町(外)の一部であり、店(内)も町である。そんな少し新しい場所を意図し、これを回答とした。



この場所が、一つ一つ、そして、一人一人、少しづつ『繋がる場』として進化し、地域活性の役割を担って行き、人々に末永く愛される場所となる事を強く期待している。



物事の現状を客観的に見直し、新しい可能性を模索し、果敢に挑戦して行く。そんなクライアントの真摯な姿勢に大いに共感しました。

大きな勇気が必要な最初の第1歩に、微力ながら携わる機会を頂けた事を心より感謝致します。

また当プロジェクトも、様々なpartnerの皆様に協力頂き実現出来た事を、重ねて感謝致します。


URAKATA design office & partners
刈内 邦夫




『青処 八百心』
広島市中区袋町2-22 袋町Kビル1F
tel:082-236-1165
fax:082-236-1175











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